やさしい因数分解⑥:もう迷わない!公式選択の4ステップ

中3

前回は、(2乗−2乗)の公式について解説しました。これで、中学校の範囲で学習する公式の解説はすべて終わりました。

前回はこちら
やさしい因数分解⑤:2乗-2乗の公式をマスターしよう

「公式は覚えたはずなのに、それでもまだ自信がない……」
そんなことないですか?

因数分解でつまづいてしまう人の多くが困るポイント、それが「どの公式を使えばいいか分からない」という壁です。

この記事では、その壁を克服するための道具、因数分解の公式を選ぶための4ステップを解説します。

予備知識(必要な公式と前提)

因数分解の公式は以下の5つです:

  • \(ma+mb=m(a+b)\)
  • \(x+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)
  • \(x+2a+a^2=(x+a)^2\)
  • \(x-2a+a^2=(x-a)^2\)
  • \(x^2-a^2=(x+a)(x-a)\)

この他に、もう1つ押さえておかなければいけないのが、次の3つの暗黙の了解です。

因数分解の暗黙の了解(重要!)
  • 出てくる式は必ず因数分解できる
  • かっこが出てくる形にしなければいけない
  • どれかの公式が必ず使える

公式選択の4ステップ

どの公式を使えばいいか迷ったときは、この順番で考えてみてください。

公式選択の4ステップ
  1. 共通因数でくくれないか?
    (公式①)
  2. (2 乗-2 乗)になっていないか?
    (公式⑤)
  3. 定数項が「整数の2 乗」になっていないか?
    (公式③、④)
  4. 「たして、かけて」の公式を使用
    (公式②)

それぞれ補足します。

  1. 共通因数でくくれないか確認(公式①)
    • 項のすべてに共通してかけられる数や文字がないか確認!
    • あるならまずそれでくくって整理!
  2. (2 乗-2 乗)になっていないか確認公式⑤)
    項が2つで(2 乗-2 乗)の形か確認
    →\(x^2-a^2=(x+a)(x-a)\)ですぐ解ける!
  3. 定数項が「整数の2 乗」になっていないか確認(公式③、④)
    定数項が整数の2 乗か確認
    →\(x\)の係数がその整数の2倍か確認
    →\(x\)の係数が正なら公式③、負なら公式④
  4. 「たして、かけて」の公式を使用(公式②)
    • 上記3つで当てはまらなければコレ!
    • 候補が多いけど、最終手段として確実に使える

「え?この順番、学校で習った順番と違う…」
と、思った人もいるかもしれませんね。

実はこれ、苦手な人がひっかかりやすいポイントです。
学校では公式①から順番に学びます。
だから、素直な人はその順番で使いたくなるかと思います。
でも実際は、習った順に考えない方が間違いなくうまくいきます。

では、例題で見てみましょう。

例題

例題1:\(2x-8\)

  1. \(2x\)と\(-8\)の共通因数は2

  \(2x-8=2(x-4)\)


例題2:\(x^2-81\)

  1. \(x^2\)と\(-81\)に共通因数なし
  2. 定数項-81:81は 9 の2 乗
    →(2 乗-2 乗)の形

  \(x^2-81=(x+9)(x-9)\)


例題3:\(x^2+6x+9\)

  1. \(x^2\)と\(6x\)と\(9\)に共通因数なし
  2. 式に項が3つ
    →(2 乗-2 乗)の形ではない
  3. 定数項 9:3 の2 乗
    →\(x\)の係数 6 : 2 × 3 = 6
    →公式③が使える

  \(x^2+6x+9=(x+3)^2\)


例題4:\(x^2-2x-8\)

  1. \(x^2\)と\(-2x\)と\(-8\)に共通因数なし
  2. 式に項が3つ
    →(2 乗-2 乗)の形ではない
  3. 定数項-8:8は整数の2 乗ではない
  4. かけて-8になる組み合わせは
    ( 1,-8)、( 2,-4)、(4 ,-2)、(8 ,-1)
    このうちたして-2になる組み合わせは
    (2 ,-4)

  \(x^2-2x-8=(x+2)(x-4)\)


例題5:\(x^2+10x+9\)

  1. \(x^2\)と\(10x\)と\(9\)に共通因数なし
  2. 式に項が3つ
    →(2 乗-2 乗)の形ではない
  3. 定数項 9:9 は 3 の2 乗
    →\(x\)の係数 10 : 2 × 3 =6
    →\(x\)の係数と一致しない
    →公式③、④は使えない
  4. かけて 9 になる組み合わせは
    ( 1, 9)、( 3, 3)、(-1 ,-9)、(-3 ,-3)
    このうちたして 10 になる組み合わせは
    (1 , 9)

  \(x^2+10x+9=(x+1)(x+9)\)

補足

この順番は、

  • 見つけやすさ
  • パターンの少なさ

を考慮しています。

「目立つ形」かつ「数が少ない順」から処理していくと、考える時間もミスも減らせます。これは数学に限らず、日常生活でも使える基本的な思考法ですよ!

終わりに

この記事では、因数分解の公式選択に迷わないための4ステップを紹介しました。

まだ計算に慣れていないうちは、ぜひこの順番でチェックしてみてください。
演習問題は別記事にまとめてありますので、あわせてご活用ください!

次回はこちら
やさしい因数分解⑦:仕上げの演習

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