【中学生向け・図解入り】やさしい因数分解:①基本と公式の整理

中3

「因数分解って、なんだかとっつきにくい…」

そう感じたことはないですか?でも大丈夫。この記事では、因数分解の基本公式ついて、塾講師時代や自分が受験生だったころの経験を踏まえて、やさしく整理していきます。

この記事の目標

  • 因数分解の意味と目的がわかる
  • 展開公式と因数分解の公式の関係がわかる
  • 式が因数分解の公式を使える形か確認できるようになる

因数分解とは

因数と因数分解

数や式をかけ算の形に直したときの要素のことを因数と言います。

たとえば、
\(8=4 \times 2\)
→ 2 と 4 は 8 の因数

また、多項式(たくさんの項からなる式)を、かけ算の形に直すことを因数分解すると言います。因数分解とは「足し算・引き算がある式をかけ算だけの形に変える操作」のことを言います。

因数分解をする目的

因数分解の目的は、式を整理することです。

たとえば、

\(a+b=0\)
という式があっても、\(a\)、\(b\)がいくつかはわかりませんが

\(a \times b = 0\)
という式があれば、かけて 0 になる数字は 0 しかないので、\(a\)、\(b\)のどちらか1つは 0 であるということがわかります。

次の2次方程式ではまさにこの考え方を使います。

このように、足し算よりかけ算の方が、式を検討しやすいのです。因数分解とは、式を考えやすくするための整理の方法だと思ってください。

基本公式の解説

ここからは、公式がどうやって導き出されているのかということと、個別の公式の使い方について解説します。

展開公式と因数分解

展開公式と因数分解の公式を見比べてみてください。

▼ 展開公式

  • \(m(a+b)=ma+mb\)
  • \((x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\)
  • \((x+a)^2=x^2+2ax+a^2\)
  • \((x-a)^2=x^2-2ax+a^2\)
  • \((x+a)(x-a)=x^2-a^2\)

▼ 因数分解の公式

  • \(ma+mb=m(a+b)\)
  • \(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)
  • \(x^2+2ax+a^2=(x+a)^2\)
  • \(x^2-2ax+a^2=(x-a)^2\)
  • \(x^2-a^2=(x+a)(x-a)\)

見てわかる通り、展開公式の左辺と右辺を入れ替えたら、そのまま因数分解の公式です。つまり、因数分解とは展開の逆の操作を行っているのです。

具体的には、

整式が展開公式の結果の形か確認
⇒公式通りに式変形

という操作です。

公式を使う以外に因数分解する方法はありません。だから、必ず公式を使えるようにしましょう。

\(ma+mb=m(a+b)\)

公式①は、いわゆる「共通因数でくくる」と言われる因数分解の公式です。

共通因数とは、全ての項に共通する因数のことを言います。具体的には、どの項も割り切れる数(公約数)が共通因数です。

たとえば、

\(3x+6y-12\)の共通因数
⇒すべての項が\(3\)で割り切れる
⇒共通因数\(3\)

公式「\(ma+mb=m(a+b)\)」では、共通因数\(m\)をカッコの外に出して、カッコの中は元の式の項をそれぞれ共通因数\(m\)で割った形になっています。

まとめると、共通因数でくくるとは、「共通因数をカッコの外に出して、カッコの中は元の項を共通因数で割った数にする」操作のことを言います。


例題1

\(2x-6\)

共通因数は 2 だから

\(2x-6y=2(x-3)\)


例題2

\(-3x-3y+9\)

共通因数は-3 だから

\(-3x-9=-3(x+y-3)\)

公式の形をそろえるために、公式の説明では2項のみの形にしましたが、3項以上になっても方法は同じです。また、例題2のように負の数でくくるときは、符号間違いに注意してください。

式変形の結果、まだ因数分解できる形が残っている場合、それは因数分解が不完全とみなされ、減点または不正解となります。

たとえば、

\(4x-8=2(2x-4)\)

このように因数分解しても、カッコ内の\(2x−4\) が因数分解可能なため、正解とはなりません

正しい答えは、

\(4x-8=4(x-2)\)

共通因数でくくるときは、すべての項を割り切れる最大の数(最大公約数)でくくるようにしましょう。


図解で確認

図解は、塾講師のころつくったノートをもとにしています。考え方が見えるように色々書いていますが、因数分解の基本公式の問題では過程を書かなくても大丈夫なので、答案としては

(元の式)=(因数分解後の式)

だけで大丈夫です。

\(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)

「かけて◯、たして△」の公式です。「因数分解と言えばこれ」みたいな公式ですね。

次は公式②です。この公式の考え方は次の通りです。

  • かけて「定数項」になる数字の組を探す
  • そのうち、足して「\(x\)の係数」になる数字の組を探す

①、②ができたら、あとは見つけた組み合わせを公式に当てはめてください。ポイントは、まず定数項に着目することです。

  • \(x\)の係数→\((a+b)\)
  • 定数項→\(ab\)

となっています。先ほど述べた通り、かけ算の形の方が考えやすく、\(a\)、\(b\)の候補を絞れるため、最初にかけ算の形の定数項に着目しています。

少し手間ですが、慣れないうちは、「かけて◯」を探すときにすべての数字の組を書き出しておくと間違いないです。

例題で確認

例題3

\(x^2-4x+3\)

  • 定数項 3
    かけて 3
    ⇒(1, 3),( -1,-3)
  • \(x\)の係数-4
    ①のうち足して-4
    ⇒(-1,-3)

\(x^2-4x+3=(x-1)(x-3)\)


例題4

\(x^2-x-12\)

  • 定数項-12
    かけて-12
    ⇒(1,-12), ( 2,-6),( 3,-4),
     ( 4,-3),( 6,-2),( 12,-1)のどれか
  • \(x\)の係数-1
    ①のうち足して-1
    ⇒( 3,-4)

\(x^2-x-12=(x+3)(x-4)\)


図解で確認


「かけて◯」の候補を考えるときに、\(x\)の係数を手がかりにすると効率良く数字の組み合わせを見つけられます。別記事にまとめましたので、自信がついたら読んでみてください。

\(x^2 \pm 2ax+a^2=(x \pm a)^2\)

2乗の形に因数分解する公式です。公式③、④はほぼ同じなのでまとめて解説します。

この公式の考え方は次の通りです。

  • 最後の数字(第3項)が2乗の形になっているか確認
  • ①で見つけた数を使って、
    \(2 \times x \times(その数)\)を計算し、第2項の数字の部分と同じか確認(+や−の符号は気にしない)
  • 第2項が正 → 公式③
    第2項が負 → 公式④

①、②ができたら、公式に当てはめてください。

①で検討する2乗の数字は、1, 4, 9, 16, 25, 36, 49, 64, 81,…で、中学校の因数分解で出題されるのは、1桁の数字の2乗がほとんどです。この辺りの数字にピンと来るようにしておきましょう。


例題5

\(x^2+8x+16\)

  • 第3項 16
    16 = 4 × 4 ⇒ 4 の 2 乗
  • \(2 \times x \times 4=8x\)
    第2項 \(8x\)の数字部分と一致
  • 第2項が正
    ⇒公式③

\(x^2+8x+16=(x+4)^2\)


例題6

\(x^2-10x+25\)

  • 第3項 25
    25 = 5 × 5 ⇒ 5 の 2 乗
  • \(2 \times x \times 5=10x\)
    第2項 \(-10x\)の数字部分と一致
  • 第2項が負
    ⇒公式④

\(x^2-10x+25=(x-5)^2\)


図解で確認


結局、公式②、③、④のいずれも、まず着目するのは定数項です。それもそのはず、公式③、④は、公式②の特殊なパターンだからです。

例1の\(x^2+8x+16\)は次のようにも考えられます。

  • 定数項 16
    かけて 16
    ⇒(1, 16),( 2, 8),( 4, 4)
    ※\(x\)の係数が正なので負の組み合わせは除外
  • \(x\)の係数 8
    ①のうち足して8
    ⇒( 4 , 4)

\(x^2+8x+16=(x+4)(x+4)\)
\((x+4)(x+4)=(x+4)^2\)

見てわかる通り、公式②でも解こうと思えば解けます。(実際、公式②の\(b\)を\(a\)に置き換えたら、公式③になります。)ただ、公式③、④を使った方がはやいので、公式を使えるようにしておいてください。

\(x^2-a^2=(x+a)(x-a)\)

この公式は、式が(2 乗)-(2 乗)の形になっているか確認すればOKです。


例題7

\(x^2-36\)

定数項 -36
36 = 6 × 6 ⇒ 6 の 2 乗

\(x^2-36=(x+6)(x-6)\)


公式②~④と違って、項が2つしかないのでわかりやすいです。ただ、この公式は、他の因数分解公式に混ざって出てくると、見落としやすいのが特徴です。実際、「この公式が出てこない」という生徒はよくいました。

公式選択の方法については、別記事にまとめているので、よかったら参考にしてください。

図解


公式③、④と公式②の関係は前項で触れました。じゃあ、公式②と公式⑤に関係はないのかというと、そんなことはなく、公式⑤も公式②の特殊なパターンと言えます。

例1の\(x^2-4\)について考えます。

\(x^2-4=x^2+0 \times x -4\)

と考えられるので、(何もないですが、\(x\)の係数を0と考えるのがミソです)

  • 定数項 -4
    かけて -4
    ⇒(1, -4),( 2, -2),( 4, -1)
  • \(x\)の係数 0
    ①のうち足して8
    ⇒( 2 , -2)

\(x^2+0 \times x-4=(x+2)(x-2)\)

という結果になります。(実際、公式②の\(b\)を\(-a\)に置き換えたら、公式③になります。)もちろん、これも公式⑤を使った方がはやいので、そちらを使ってください。

おわりに

今回はの記事では

  • 因数分解の意味、目的
  • 展開公式と因数分解の公式の関係
  • 式が因数分解の公式を使える形かの確認方法

について整理しました。

コツコツ取り組んでいけば確実に力がついていき、問題の見え方が変わってきます。「この問題はこの形の公式が使えそうだな」と自然に気づけるようになります。あせらず、一歩ずつ進んでいきましょう。

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