
「“かけて◯、足して△”はわかるけど、時間がかかる…」
そんな人に向けた記事です。
このページでは、因数分解の定番公式:
\(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)
を使うときに、\(a,b\) の組み合わせをどう探せばよいかを、図解付きでわかりやすく解説します。
解説
\(a,b\) の組み合わせをスムーズに見つけるコツは、\(x\)の係数に注目することです。
なぜなら、定数項の符号と\(x\)の係数の絶対値の関係を見ることで、\(a,b\)の大まかな組み合わせが絞れるからです。

慣れてくると、さくさくできるようになりますよ。
まず、定数項の符号は、次のように読み替えることができます。
- 定数項が正
⇒\(a,b\)は同符号 - 定数項が負
⇒\(a,b\)は異符号
ここで、\(a+b\)(\(x\)の係数)の性質を整理します。
まず、\(a,b\)が同符号のときを考えてみます。
- \(a=3,b=5\)のとき、\(a+b=8\)
- \(a=-2,b=-4\)のとき、\(a+b=-6\)
となり、
\(a+b\)の絶対値=\(a,b\)の絶対値の和
であることがわかります。
同じように、\(a,b\)が異符号のときを考えてみると、
- \(a=3,b=-5\)のとき、\(a+b=-2\)
- \(a=-2,b=4\)のとき、\(a+b=2\)
となり、
\(a+b\)の絶対値=\(a,b\)の絶対値の差
であることがわかります。
上の例の通り、\(a,b\)が異符号のとき、\(a,b\)それぞれの絶対値の差が、\(a+b\)の絶対値になっています。
まとめると、次のことが言えます。
定数項の符号 | \(a, b\)の符号 | \(x\)の係数の絶対値 |
正 | 同符号 | \(a,b\)の絶対値の和 |
負 | 異符号 | \(a,b\)の絶対値の差 |

つまり、上の表は、数字だけで考えると定数項の符号によって、\(x\)の係数の数字が、足し算の結果なのか、または引き算の結果なのかがわかるということを示しています。
これを使うと、まず符号を無視して数字の組み合わせだけを考え、そのあと式の形から符号を決めることができ、効率よく\(a,b\)の組み合わせを見つけることができます。

「え、それだけ?」と思うかもしれませんが、それだけで計算のやりやすさは大きく変わります。人は、考えることが多くなるほどミスをしやすくなったり、考えがまとまらなくなったりします。だから、やることを分けて1つに集中できるようにすることは、とても大切なことなのです。
例題1
\(x^2-10x+24\)
定数項が24で正、\(x\)の係数が-10
⇒2数の絶対値の和が10
⇒2数の絶対値の組み合わせは( 4, 6)
符号を合わせて考えると、2数の組み合わせは(-4,-6)
\(x^2-10x+24=(x-4)(x-6)\)
例題2
\(x^2+22x-48\)
定数項が-48で負、\(x\)の係数が 22
⇒2数の絶対値の差が 22
⇒2数の絶対値の組み合わせは( 2, 24)
符号を合わせて考えると、2数の組み合わせは(-2,24)
\(x^2+22x-48=(x-2)(x+24)\)

例題2のように、2つの数のうちどちらかが2桁になると迷いやすいです。
2数がどちらも1桁なら、\(x\)の係数の絶対値は最大で18。つまり、18を超えたら2桁の数が混ざっています。こういうときは、1×○、2×○、3×○…と、小さい数から試すとうまくいきます。
あまり細かく覚えておくほどのことではないのですが、「\(x\)の係数が大きいときは、2桁の数が入っているかも」というくらいの感覚を持っておくと、解くのが楽になります。
図解で考えてみよう

図解にすると次のようになります。
演習
演習1
\(x^2-6x+8\)
定数項 8:正
\(x\)の係数:-6
⇒\(a,b\)はかけて 8、絶対値の和が6
⇒\(a,b\)の絶対値の組み合わせは( 2, 4)
符号を考えて
\(x^2-6x+8=(x-2)(x-4)\)
演習2
\(x^2+6x-72\)
定数項-72:負
\(x\)の係数:6
⇒\(a,b\)はかけて-72、絶対値の差が 6
⇒\(a,b\)の絶対値の組み合わせは( 6, 12)
符号を考えて
\(x^2+6x-72=(x+12)(x-6)\)
演習3
\(x^2-30x-64\)
定数項-64:負
\(x\)の係数:-30
⇒\(a,b\)はかけて-64、絶対値の差が30
⇒\(a,b\)の絶対値の組み合わせは( 2, 32)
符号を考えて
\(x^2-30x-64=(x+2)(x-32)\)
おわりに
今回は、”かけて◯、足して△”の公式の、計算の工夫を紹介しました。
塾の講師をしていたころの話ですが、この考え方は、数学が得意な生徒には公式の導入時にあわせて説明することが多く、苦手な生徒にはテスト前の演習時などに補足的に伝えていました。人によっては、候補を全部書き出した方がはやいし正確という人もいます。
他にも自分なりの判断ポイントはありますが、状況に応じて使い分けているため、この記事では割愛しています。塾などであれば、個人の進度に合わせてアドバイスできるのが強みですね。
どれが正しい方法というものでもないので、「自分が使いやすい方法」を見つけることが一番大事ですよ。
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