「公式は覚えたはずなのに、問題によってどれを使えばいいかわからなくなる…」
そんな悩みを抱えていませんか?
因数分解は、丸暗記に頼ろうとすると式が複雑になった途端につまずきやすくなります。
でも、因数分解の正体は「かけ算の形に整理する操作」であり、解法の手順さえ知っていれば迷うことはありません。
この記事では、5つの基本公式を効率よく見極める「4ステップの判断手順」をていねいに解説します。
順を追って整理していけば、どんな問題でも自信を持って解き進められるようになりますよ。
- 因数分解とは何か、何のために行うのか
- 迷いをなくす「5つの基本公式」の見極めポイントと計算手順
- テストで素早く正確に公式を選べるようになる「4ステップの判断順序」
因数分解とは何かをていねいに解説
因数分解とは、多項式(足し算、引き算で項がつながる式)を、かけ算の形に変形する操作
※カッコは一つのかたまりと見るので、中に足し算、引き算があってもよい
まず、「因数」、「因数分解」という言葉の意味を整理していきます。
因数とは?
数や式をかけ算の形に直したときの要素のことを因数と言います。
いくつか具体例を見てみましょう。
- \(8=2 \times 4\)
⇒\(2\)と\(4\)は\(8\)の因数 - \(xy=x \times y\)
⇒\(x\)と\(y\)は\(xy\)の因数 - \((x+1)(x+2)=(x+1) \times (x+2)\)
⇒\((x+1)\)と\((x+2)\)は\((x+1)(x+2)\)の因数
因数の意味がわかると、因数分解も何となくイメージしやすくなるんじゃないでしょうか?
では、次は因数分解とは何かを見ていきましょう。
因数分解は「かけ算のカタマリ」を作ること
因数分解とは、多項式(足し算、引き算で項がつながる式)をかけ算だけの式に変形する操作のことです。
たとえば、\((x+1)(x+2)\)を展開すると\(x^2+2x+3\)になります。
だから、逆に
\(x^2 + 3x + 2 = (x+1)(x+2)\)
と元に戻すこともできるはずです。
最初は\(x^2+2x+3\)という多項式でしたが、変形して\((x+1)\)、\((x+2)\)という因数のかけ算で表されています。
このように、多項式を因数のかけ算の式に変形することを因数分解と呼んでいるのです。
「\((x+1)(x+2)\)のカッコの中の足し算はいいの?」
と思われる方がいるかもしれません。
結論を言うと、カッコの中は足し算・引き算があっても構いません。
カッコの中はひとかたまりとして見るが数学のルールだからです。
カッコの中が文字と数字で計算できないので、そのまま残っているだけと考えてください。
因数分解って何の役に立つの?
因数分解の目的は、式の見通しをよくすること
\(a+b=0\)と\(ab=0\)という2つの式を考えてみます。
\(a+b=0\)
という式があっても、\(a\)、\(b\)がいくつかはわかりませんが
\(a \times b = 0\)
という式があれば、かけて 0 になる数字は 0 しかないです。
だから、\(a\)、\(b\)のどちらか1つは 0 であるということがわかります。
この比較からもわかる通り、足し算よりかけ算の方が、式を検討しやすいです。
そのため、同じ式でも、足し算のかたちのまま扱うより、かけ算のかたちにした方が、色々なことを考えやすくなるのです。
因数分解とは、式を考えやすくするための整理の方法なんです。

次に学習する二次方程式では、「\(ab=0\)なら\(a\)か\(b\)のどちらか1つが0」という考え方をするため、さっそく因数分解を使うことになります。
因数分解の問題を解くときの押さえておきたい大まかな方針
- 因数分解の基本方針
-
すべての因数分解は次の方針で考える
- 公式に当てはまる形か確認
- 公式を使って計算
- 因数分解の勉強のポイント
-
公式の適用条件を必ず押さえる
因数分解のざっくりしたイメージが掴めたら、次は実際にどういう計算をするのか、イメージを具体的にしていきましょう。
因数分解の武器はたったの5つ!
因数分解で使う公式は、実は次の5つだけです。
- 共通因数でくくる
\(ma+mb=m(a+b\) - 和と積の公式
\(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\) - 2乗の公式(プラス)
\(x^2+2ax+a^2=(x+a)^2\) - 2乗の公式(マイナス)
\(x^2-2ax+a^2=(x-a)^2\) - 2乗 − 2乗の公式
\(x^2-a^2=(x+a)(x-a)\)
これらはすべて、以前学習した「展開の公式」の逆の操作を行っています。
展開と因数分解の決定的な違い
「展開」は最悪、公式を忘れても分配法則などの定義通りに計算していけば解くことができました。
でも、「因数分解」は公式を使わずに解く方法がありません。
そのため、因数分解の計算は必ず次の2つのステップで考えます。
- 「公式が使える形かどうか」の確認
- 公式に当てはめた実際の計算
因数分解が苦手な人の共通点と効果的な練習方法
因数分解が苦手な多くの人に当てはまるのが、次の2つです。
- 「公式以外に自分の知らない解き方があるのではないか」と思ってしまう
- 「確認」と「計算」を分けずに、1つの作業として処理しようとしてしまう
まず、1つ目ですが、先ほど説明した通り、因数分解には公式以外の解き方はありません。
応用問題でも、結局は基本公式を組み合わせて解いているだけで、何か特別な裏ワザを使っているわけではないのです。
このことを強く意識しておくだけでも無駄な迷いがなくなるので、ぜひ押さえておいてください。
次は2つ目についてです。
作業を1つにまとめてしまう人に共通するのが、最初の「確認」がおざなりになってしまうことです。
そうなると、どの公式を使うか分かっている問題は解けても、どの公式を使うかがわからなくなると、どうしていいかわからなくなってしまいます。
因数分解の苦手から抜け出す近道は、「確認」と「計算」を意識してはっきり分けることです。
普段の演習から、問題ごとに
- 「式のどこを見て(確認)」
- 「どの公式を使おうと思ったか(判断)」
を一つひとつ意識しながら手を動かしていくと、どの公式を使うべきか見抜く力がついていきます。
因数分解の5つの公式の見極めポイントと使い方
ここからは、5つの公式の見極めポイントと使い方をそれぞれ見ていきます。
【共通因数】\(ma+mb=m(a+b)\)
- 見極めポイント
-
「すべての項を割り切れる数がある」「すべての項に共通する文字がある」
- 公式を使う手順
-
- 探す:
すべての項を割り切れる「最大の数字と文字」を見つける - 出す:
その共通因数をカッコの外に書く - 割る:
「元の式÷共通因数」をカッコの中に書き込む
- 探す:
- よくあるミス
-
- 途中で因数分解をやめてしまう
- 負の数で括るときの符号間違い
- カッコの中身の\(1\)を\(0\)としてしまう
いわゆる「共通因数でくくる」と呼ばれる公式です。
共通因数とは?
共通因数とは、字の通り、全ての項に共通する因数のことです。
因数とはかけ算にしたときの要素のことだったので、ある数は必ずその因数で割り切れます。
だから、2つの数が共通因数を持つかどうかは、2つの数を割り切れる数があるかどうかで見分ければよいです。
たとえば、次のように判断するとよいです。
- \(2x\)と\(4\)
→どちらも\(2\)で割り切れるので共通因数は\(2\) - \(ma\)と\(mb\)
→どちらも\(m\)で割り切れるので共通因数は\(m\) - \(-2ax\)と\(-6a\)
→どちらも\(-2a\)で割り切れるので共通因数は\(-2a\)
どうやったら共通因数でくくれる?
共通因数でくくるときは、共通因数をカッコの外に出して、元の数を共通因数で割った結果をカッコの中に残します。
実際に例題で見ていきましょう。
例1:
\(2ax+2a\)の因数分解
\(2ax\)と\(4a\)はどちらも\(2\)で割り切れて、\(a\)を持つので共通因数は\(2a\)
- \(2ax \div 2a = \color{red}{x}\)
- \(2a \div 2a = \color{blue}{1}\)
なので、因数分解すると次の通り
\(2ax+2a= 2a(\color{red}{x}+\color{blue}{1})\)
例2:
\(-3x-9\)の因数分解
\(-3x\)と\(-9\)はどちらも\(-3\)で割り切れるので共通因数は\(-3\)
- \(-3x \div (-3) = \color{red}{x}\)
- \(-9 \div (-3) = \color{blue}{3}\)
なので、因数分解すると次の通り
\(-3x-9= -3(\color{red}{x}+\color{blue}{3})\)
共通因数でくくるときによくあるミス
共通因数でくくるときによくあるミスをご紹介します。
- 途中で因数分解をやめてしまう
-
例1のような問題で、共通因数を\(a\)と考えて次のように考えるケースです。
- \(2ax+2a= a(2x+2)\)
カッコの中身の\((2x+4)\)が、まだ共通因数\(2\)でくくれます。
こういう解答は、因数分解が不完全とみなされて減点となります。 - 負の数でくくるときの符号間違い
-
例2のような問題で、負の数でくくるときの符号間違いです。
負の数でくくったときは、カッコの中の符号も変わりますが、これを変え忘れてしまうことがよくあります。
- \(-3x-9=-3(x-3)\)
展開のときにも多いミスなので、必ず気をつけるようにしてください。
- カッコの中身の\(1\)を\(0\)としてしまう
-
例1のように、カッコの中身を\(1\)とすべきところを\(0\)としてしまうミスです。
- \(2ax+2a= 2ax\)
(\(2a(x+0\)とみなしている)
割られる数と割る数が同じときの割り算の答えは\(0\)ではなく\(1\)です。
もし間違えたことがあったら、もう一度確認しておいてください。
- \(2ax+2a= 2ax\)
【和と積の公式】\(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)
- 見極めポイント
-
他の公式がどれも使えない
- 公式を使う手順
-
\(x^2+\color{blue}{○}x+\color{red}{△}\)
- 定数項(\(\color{red}{△}\))で候補を出す
定数項を見て、かけて定数項になる組み合わせを書きだす - \(x\)の係数(\(\color{blue}{◯}\)で絞り込み
1の組み合わせのうち、足して「(x)の係数」になる数字の組を探す - 公式に当てはめる
探した数字の組を公式に当てはめる
- 定数項(\(\color{red}{△}\))で候補を出す
ここでは「和と積の公式」について解説していきます。
和と積の公式を使うかどうかの見極めポイント
\(x^2 \color{blue}{+(a+b)}x \color{red}{+ab}=(x+a)(x+b)\)
定数項がある2数の積(\(\color{red}{+ab}\))、\(x\)の係数がその2数の和(\(\color{blue}{+(a+b)}\))になっているときにこの公式が使えます。
「因数分解といえばこれ」みたいな公式で、学習するのも共通因数の後で、公式の中では最初の方に習うので印象に残りやすいのですが、そこが案外落とし穴だったりします。
この公式は、共通因数と同じぐらい適用範囲が広いわりに、使えるかどうかが共通因数ほどわかりやすくありません。
そのため、「この公式が使えるかどうか考える」というよりは、「他の公式がダメだったからこれを使う」ぐらいで判断するのがよいです。
具体例で因数分解の和と積の公式を確認してみよう
例1:
\(x^2+4x+3\)
\(x^2\color{blue}{+4}x \color{red}{+3}\)
かけて\(3\)になる数字の組み合わせは、
\((1,3),(-1,-3)\)
最初に出した候補のうち足して\(+4\)になる組み合わせは、
\((1,3)\)
公式\(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)で\(a=1,b=3\)とわかったので、公式の\(a,b\)のところに探した\((1,3)\)を当てはめる
\(x^2+4x+3=(x+1)(x+3)\)
例2:
\(x^2-6x+8\)
\(x^2\color{blue}{-6}x \color{red}{+8}\)
かけて\(8\)になる数字の組み合わせは、
\((1,8),(2,4),(-1,-8),(-2,-4)\)
最初に出した候補のうち足して\(-6\)になる組み合わせは、
\((-2,-4)\)
\(a=-2,b=-4\)を公式に当てはめる
\(x^2-6x+8=(x-2)(x-4)\)
例3:
\(x^2-2x-24\)
\(x^2\color{blue}{-2}x \color{red}{-24}\)
かけて\(-24\)になる数字の組み合わせは、
\((1,-24),(2,-12),(3,-8),(4,-6),(6,-4),(8,-3),(12,-2),(24,-1)\)
最初に出した候補のうち足して\(-2\)になる組み合わせは、
\((4,-6)\)
\(a=4,b=-6\)を公式に当てはめる
\(x^2-2x-24=(x+4)(x-6)\)



効率よく探す工夫は、後の章で解説します。
【2乗の公式】\(x^2 \pm 2ax + a^2 = (x \pm a)^2\)
- 見極めポイント
-
2乗の公式は次の2ステップで確認する
- 定数項が2乗の数字
- \(x\)の係数が定数項を2乗する前の数字(平方根)の2倍
- 公式を使う手順
-
公式のプラス、マイナスともに、適用できる定数項、係数の条件は同じなので、数字だけを考えて2乗の数字
\(x^2+\color{blue}{○}x+\color{red}{△}\)
- 定数項(\(\color{red}{△}\))を確認
定数項が2乗の数字(\(1,4,9,16,25\)など)になっていないか確認する - \(x\)の係数(\(\color{blue}{◯}\)が定数項の2乗前の2倍になっていないか確認
定数項が、1の数字の2乗前の数字の2倍になっていなか確認する - \(x\)の係数の符号でプラス、マイナスどちらの公式を使うか判断して公式を当てはめる
- \(x\)の係数が正
\(x^2+2ax+a^2=(x+a)^2\) - \(x\)の係数が負
\(x^2-2ax+a^2=(x-a)^2\)
- \(x\)の係数が正
- 定数項(\(\color{red}{△}\))を確認
- 注意点
-
定数項が2乗の数字でも和と積の公式のときもあるので、必ず\(x\)の係数も確認する
式が\(x^2+◯x+△\)になっていて、和と積の公式と同じの形をしていますが、和と積の公式よりもかなり見分けやすいです。
ポイントは、「定数項⇒\(x\)の係数」の順で確認することです。
2乗の公式を使うかどうかの見極めポイント
\(x^2 \color{blue}{\pm 2a}x \color{red}{+a^2} = (x \pm a)^2\)
真ん中の符号がプラス、マイナスどちらの場合も、使えるかどうかの見極め方は同じです。
定数項がある数の2乗(\(\color{red}{+a^2}\))、\(x\)の係数がその数を2乗する前の数(平方根)の2倍(\(\color{blue}{\pm 2a}\))になっているときにこの公式が使えます。
順番としては次の通り考えれば大丈夫です。
- 定数項が2乗の数字(\(1,4,9,16,25,36,49…\)か
- \(x\)の係数が定数項を2乗する前の数(平方根)の2倍か
- 定数項\(25\):\(5\)の2乗
⇒定数項が\(2 \times 5 = 10\)ならOK - 定数項\(49\):\(7\)の2乗
⇒定数項が\(2 \times 7 = 14\)ならOK
- 定数項\(25\):\(5\)の2乗
具体例で因数分解の2乗の公式を確認
例1:
\(x^2+12x+36\)の因数分解
\(x^2 \color{blue}{+12}x \color{red}{+36}\)
\(36=6^2\)なので、定数項は2乗の数
\(36\)の2乗前の数字は\(6\)
\(x\)の係数\(+12= 2 \times 6\)
2乗の公式が使える形とわかる
\(x\)の係数は\(+12\)で正のため、次のプラスの公式を使う
\(\rightarrow x^2+2ax+a^2=(x+a)^2\)
\(x^2+12x+36=(x+6)^2\)
例2:
\(x^2-4x+4\)の因数分解
\(x^2\color{blue}{-4}x \color{red}{+4}\)
\(4=2^2\)なので、定数項は2乗の数
\(4\)の2乗前の数字は\(2\)
\(x\)の係数\(-4= 2 \times (-2)\)
2乗の公式が使える形とわかる
\(x\)の係数は\(-4\)で負のため、次のマイナスの公式を使う
\(\rightarrow x^2-2ax+a^2=(x-a)^2\)
\(x^2-4x+4=(x-2)^2\)
2乗の公式を使うときの注意点
定数項が2乗の数のときに、必ずしも2乗の公式が使えるわけではありません。
たとえば、次の式では、
\(x^2-10x+16\)
- 定数項:\(16\)
\( \rightarrow 4\)の2乗 - \(x\)の係数:\(-10\)
\( \rightarrow (-10)=2 \times (-5)\)
となっており、\(x\)の係数が\(4\)の2倍になっていないため、2乗の公式は使えません。
実際、この式は和と積の公式を使って次のように因数分解します。
\(x^2-10x+16=(x-2)(x-8)\)
定数項が2乗の数だからと、すぐに2乗の公式を使わず、\(x\)の係数を必ず確認してください。
【2乗-2乗の公式】\(x^2-a-2=(x+a)(x-a)\)
- 見極めポイント
-
項が2つで共通因数でくくれない
- 公式を使う手順
-
- 前の項が2乗の数になっているか確認
- 後ろの項が2乗の数になっているか確認
- 2つの項の引き算になっているか確認
- 公式に当てはめる
この公式は、公式自体は難しくないですが、いろいろな公式が混ざったときに見落としやすいのが特徴です。
「2乗-2乗の公式」が使えるかどうかの見極めポイント
元の式の項が2つしかないのは、共通因数でくくる形か、この公式だけです。
そのため、項が2つで、共通因数でくくれないとわかった時点で、この公式を思い浮かべてください。
2乗-2乗の公式を具体例で見てみよう
例:
\(x^2-49\)
- 前の数字
\(x^2\):\(x\)の2乗 - 後ろの数字
\(49\):\(7^2\) - 計算の確認
計算はひき算
よって
\(x^2-49=(x+7)(x-7)\)
因数分解の和と積の公式で効率よく2数を探すコツ
- 基本方針
-
数字(絶対値)と符号を分けて考える
- 手順
-
- 符号を無視して数字の組の候補を考える
「かけて定数項の絶対値」になる2つの自然数の組み合わせを考える - 定数項の符号から2数の足し算、または引き算のどちらが\(x\)の係数になっているか考える
- 定数項が正
→2つの自然数の足し算が\(x\)の係数の絶対値 - 定数項が負
→2つの自然数の引き算が\(x\)の係数の絶対値
- 定数項が正
- 実際の符号に合わせて、自然数の組に符号をつける
- 符号を無視して数字の組の候補を考える
和と積の公式で一番困るのが、最初に候補を上げるときに、数え漏らしをしてしまうことです。
そのため、候補を絞る段階では符号を無視して数字のペアだけを考えて、数字のペアが決まってから符号を考えるように分けると、候補の絞り込みが楽になります。
言葉だと少しわかりにくいと思うので、実際の例題で確認してみましょう。
和と積の公式のコツを具体例で確認してみよう
例1:
\(x^2-17x+72\)
符号は一旦無視して、積が\(72\)になる自然数の組を探すと、次の組み合わせが見つかります
\((1,72),(2,36),(3,24),(4,18),(6,12),(8,9)\)
定数項(\(+72\))がプラスなので、2数の「足し算」の答えが\(x\)の係数の絶対値(\(17\))になっています
→合計が\(17\)になるのは\((8, 9)\)のペア
\(x\)の係数が\(-17\)なので、両方にマイナスをつけて \((-8, -9)\)が正解
\(x^2-17x+72=(x-8)(x-9)\)
例2:
\(x^2-x-72\)の因数分解
符号は一旦無視して、積が\(72\)になる自然数の組を探すと、次の組み合わせが見つかります
\((1,72),(2,36),(3,24),(4,18),(6,12),(8,9)\)
定数項(\(-72\))がマイナスなので、2数の「引き算」の答えが\(x\)の係数の絶対値(\(1\))になっています
→差が\(1\)になるのは\((8, 9)\)のペア
\(x\)の係数が\(-1\)なので、大きい方にマイナスをつけて \((8, -9)\)が正解
納得したい人向けのコラムです。
定数項がプラスなら\(x\)の係数は足し算、-なら\(x\)の係数が引き算になる理由は次の通りです。
- 定数項がプラスのとき
-
かけると+になるのは「+と+」または「-と-」の同符号ペアだけ。
数字だけを見ると、同符号の足し算は、絶対値同士の「和(足し算)」になります。例:
- \((+2) + (+3) = +5\)
- \((-3) + (-4) = -7\)
- 定数項がマイナスのとき
-
かけると-になるのは「+と-」の異符号ペアだけ。
数字だけを見ると、異符号の足し算は、絶対値同士の「差(引き算)」になります。例:
- \((+1) + (-6) = -5\)
- \((-8) + (+5) = -3\)
仕組みが分かったら、実際の計算では「定数項が+なら足し算!-なら引き算!」と機械的に判断して進めてOKです!
【4ステップ】因数分解の公式はどの順番で考えればいい?
【公式を検討する順番】
- 共通因数
- 「2乗-2乗」の公式
- 2乗の公式
- 和と積の公式
「公式別の練習なら解けるのに、テストでいろいろな問題が混ざると急に解けなくなる…」
そう悩む人はとても多いです。
原因はとてもシンプルで、「判断する順番」が決まっていないからです。
テスト中は考えることが山ほどあります。
だからこそ、「考えなくていいことは考えない仕組み(手順)」をあらかじめ作っておくことが、ミスを減らして、スピードを上げる最大のコツです。
因数分解の公式の選び方、各ステップの解説
基本的には、「簡単に判断できるもの」を前に持ってきています。
最初にもお伝えしましたが、因数分解は公式以外では解けません。
だから、5つのうちのどれが使えるかを消去法で考えていくのが効率的です。
そして、思考の消去法における基本ルールは、「検証(チェック)が楽なものから順番に切っていくこと」です。
- 一瞬で見分けがつく「軽い判定」を先に終わらせて選択肢を絞る
- 最後に残った「処理が重い確認」に、脳の集中力を100%注ぎ込む
この順番を守るだけで、無駄なフリーズや見落としがなくなり、スムーズに問題が解けるようになります。
具体的には次のように確認していってください。
すべての項を割り切れる数や共通の文字がないかを探します。
一番単純ですが、一番見落としやすいため最初に確認してください。
最初に共通因数をくくり出しておくと、式の見通しがよくなるため、応用問題で2回公式を使う場合でも考えやすくなります。
式が「2乗-2乗」になっていないか確認します。
「項が2つしかない」公式はこれだけなので余計な暗算も必要ありません。
慣れてしまえば一瞬で見抜けます。
次の2つを確認します。
- 定数項が2乗の数か
- (もし2乗であれば)\(x\)の係数が定数項の2乗前の数の2倍か
「和と積の公式」よりも判別しやすいため、まずこちらから確認します。
「かけて◯◯、たして◯◯」と数字の組み合わせを探す、一番集中力を使う作業だから、一番最後にまわします。
他の可能性をすべて消去した上で、最後にじっくり取り組むと、集中して計算することができます。



慣れると、最後の「和と積の公式を使う」という決定までいったとしても、数秒で決められるようになりますよ。
【因数分解】基本公式の練習問題
因数分解は、公式通り処理する力と、公式を選ぶ力が必要です。
そのため、次のように段階を踏んで練習すると、効果的に学習を進めることができます。
- 各公式の処理に慣れる
- 公式の見極めに慣れる
- 「見極め+処理」の一括の操作に慣れる
ここから紹介する10問を使って、まずは「①どの公式を使うか」だけをサクサク判定し、そのあとで「②最後まで計算する」という2ステップで挑戦してみてください!
練習問題
次の式を因数分解しなさい。
1)
\(x^2+5x+6\)
2)
\(x^2+4x+4\)
3)
\(x^2-64\)
4)
\(x^2-10x+25\)
5)
\(x^2-4x\)
6)
\(x^2-10x+16\)
7)
\(x^2+16x+64\)
8)
\(x^2-12x-64\)
9)
\(x^2-25\)
10)
\(2x^2-6x\)
①公式選択の解説
1)
\(x^2+5x +6\)
⇒和と積の公式をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が3つなので違う - 2乗の公式
定数項が\(+6\)で2乗の数字ではないので2乗の公式は使えない
2)
\(x^2+4x+4\)
⇒2乗の公式(プラス)をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が3つなので違う - 2乗の公式
- 定数項が\(+4\)で2乗の数字
⇒2乗して\(+4\)になるのは\(2\) - \(x)の係数の数字\(4\)は\(2 \times 2\)
⇒2乗の公式が使える - \(x\)の係数の符号がプラス
- 定数項が\(+4\)で2乗の数字
3)
\(x^2-64\)
⇒「2乗-2乗」の公式をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が2つで\(64\)が\(8\)の2乗なので、公式が使える
4)
\(x^2-10x+25\)
⇒2乗の公式(マイナス)をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が3つなので違う - 2乗の公式
- 定数項が\(+25\)で2乗の数字
⇒2乗して\(+25\)になるのは\(5\) - \(x\)の係数の数字\(5\)は\(2 \times 5\)
⇒2乗の公式が使える - \(x\)の係数の符号がマイナス
- 定数項が\(+25\)で2乗の数字
5)
\(x^2-4x\)
共通因数でくくる
【考え方】
- 共通因数
どちらの項も\(x\)をもつので、共通因数でくくれる
6)
\(x^2-10x+16\)
⇒和と積の公式をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が3つなので違う - 2乗の公式
- 定数項が\(16\)で2乗の数字
⇒2乗して\(+16\)になるのは\(4\) - \(x\)の係数の数字は\(10\)
\(2 \times 4=8\)
⇒\(x\)の係数が条件を満たさないので2乗の公式は使えない
- 定数項が\(16\)で2乗の数字
7)
\(x^2+16x+64\)
⇒2乗の公式(プラス)をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が3つなので違う - 2乗の公式
- 定数項が\(+64\)で2乗の数字
⇒2乗して\(+64\)になるのは\(8\) - \(x\)の係数の数字\(16\)は\(2 \times 8\)
⇒2乗の公式 - \(x\)の係数の符号がプラス
- 定数項が\(+64\)で2乗の数字
8)
\(x^2-12x-64\)
⇒和と積の公式をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が3つなので違う - 2乗の公式
定数項が\(-64\)で2乗の数字ではないので2乗の公式は使えない



\(+64\)は\(8\)の2乗ですが、\(-64\)は2乗の数字ではないので気をつけてください。
9)
\(x^2-25\)
⇒「2乗-2乗」の公式をつかう
【考え方】
- 共通因数
共通の文字や、全部を割り切れる数はなし - 2乗-2乗
項が2つで\(25\)が\(5\)の2乗なので、公式が使える
10)
\(2x^2-6x\)
【考え方】
- 共通因数
どちらの項も\(2x\)をもつので、共通因数でくくれる
②因数分解の解説
1)
\(x^2+5x +6=(x+2)(x+3)\)
【考え方】
\((1,6),(2,3)\)
定数項がプラス
⇒2数の足し算の結果が\(x\)の係数の絶対値\(5\)
\((2,3)\)
\(x\)の係数がプラスなので、2数は両方ともプラス
2)
\(x^2+4x+4=(x+2)^2\)
【考え方】
2乗すると\(4\)になるのは\(2\)なので、\(a=2\)としてプラスの2乗の公式を使う。
3)
\(x^2-64=(x+8)(x-8)\)
【考え方】
2乗すると\(64\)になるのは\(8\)なので、\(a=8\)として「2乗-2乗」の公式を使う。
4)
\(x^2-10x+25=(x-5)^2\)
【考え方】
2乗すると\(25\)になるのは\(5\)なので、\(a=5\)としてマイナスの2乗の公式を使う。
5)
\(x^2-4x=x(x-4)\)
6)
\(x^2-10x+16=(x-2)(x-8)\)
【考え方】
\((1,16),(2,8),(4,4)\)
定数項がプラス
⇒2数の足し算の結果が\(x\)の係数の絶対値\(10\)
\((2,8)\)
\(x\)の係数がマイナスなので、2数は両方ともマイナス
7)
\(x^2+16x+64=(x+8)^2\)
【考え方】
2乗すると\(64\)になるのは\(8\)なので、\(a=8\)としてプラスの2乗の公式を使う。
8)
\(x^2-12x-64=(x+4)(x-16)\)
⇒和と積の公式をつかう
【考え方】
\((1,62),(2,32),(4,16),(8,8)\)
定数項がマイナス
⇒2数の引き算の結果が\(x\)の係数の絶対値\(12\)
\((4,16)\)
\(x\)の係数がマイナスなので、2数のうち大きい方がマイナス
9)
\(x^2-25=(x+5)(x-5)\)
【考え方】
2乗すると\(25\)になるのは\(5\)なので、\(a=5\)として「2乗-2乗」の公式を使う。
10)
\(2x^2-6x=2x(x-3)\)
おわりに
因数分解は、式を「かけ算のカタマリ」にして見通しをよくするための大切な整理手法です。テストでスムーズに解くための最大のコツは、「確認(見極め)」と「計算」をしっかり分けて処理すること。そして、確認が楽な公式から順番にチェックしていくことです。この判断手順が身につけば、どんな応用問題に出会っても焦らず冷静に対処できるようになります。まずは基本の思考パターンを手に馴染ませていきましょう。
【今回の重要ポイント】
- 共通因数から順にチェック:「共通因数→2乗−2乗→2乗の公式→和と積」の優先順位で判別する
- 「確認」と「計算」を分ける:解く前に「どの式の形か」を判断する癖をつける
- 和と積は数字と符号を分離:かけて定数項になるペアを出してから、符号を検討するとミスを防げる
【次にやってみよう】
この記事で紹介した「公式の選び方」を意識しながら、教科書やワークの基本問題を5問ほど解いてみましょう。
式のどこに着目して公式を選んだか、声に出したりメモしたりしながら進めるのがおすすめです。


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