【中学生向け】やさしい因数分解:②公式選択の方法とおすすめ勉強方法

中3

「公式は覚えたはずなのに、それでもまだ自信がない……」
そんなふうに感じたことはありませんか?

因数分解でつまずいてしまう人の多くが悩むポイント、それが「どの公式を使えばいいか分からない」という壁です。

公式の練習を重ねれば、いつかは必ずできるようになります。でも、どうせならもっと効率よく勉強を進めたいと思いませんか?そんな「できるだけ早くコツをつかみたい」という人に向けた記事です。

この記事では、

  • 因数分解、公式選択の方法
  • おすすめの勉強法

について、塾講師時代の経験や、自分の受験生時代の経験をもとに解説します。

予備知識(必要な公式と前提)

因数分解の公式を再掲します。

  • \(ma+mb=m(a+b)\)
  • \(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)
  • \(x^2+2a+a^2=(x+a)^2\)
  • \(x^2-2a+a^2=(x-a)^2\)
  • \(x^2-a^2=(x+a)(x-a)\)

因数分解は公式以外に解く手段はありません。だから、因数分解をする問題では、必ず公式のうちのどれかを使うと思ってください。ここを意識できることって、実は因数分解ではとても大事なんです。

中学校の範囲では、因数分解を解くときの最初の方針は、実は、5者拓一です。ここを意識できていないと、色々方法がある気がしてしまって余計に迷ってしまいます。

余談ですが、高校の範囲では公式は増えますが、やっぱり公式以外の選択肢はほとんどありません。公式以外の因数分解もないこともないですが、かなり稀な上に、基本的に誘導問題がつきます。

公式選択の4ステップ

公式を選択する際には、次のステップで考えるとほとんどの問題は漏れなく、うまくいきます。ポイントは、見分けのつきやすいもの、見落としやすいものから検討していくことです。

  1. 共通因数でくくれないか?
    (公式①)
  2. 式は( 2 乗-2 乗 )の形か?
    (公式⑤)
  3. 定数項が「整数の 2 乗」か?
    (公式③、④)
  4. 「たして、かけて」の公式を使用
    (公式②)

要約すると、公式①⇒公式⑤⇒公式③、④の順で検討して、どれも当てはまらなければ公式②を使うのが基本的な流れです。

「え?この順番、学校で習った順番と違う…」
と、思った人もいるかもしれませんね。

実はこれ、苦手な人がひっかかりやすいポイントです。
学校では公式①から順番にぶので、素直な人ほどその順番で使いたくなるかと思います。でも、習った順番どおりに考えるよりも、公式の特徴に注目して順番を工夫したほうが、ずっと解きやすくなります。

前の記事でも触れましたが、公式③~⑤は、本質的に公式②と同じものです。位置づけ的には、公式②の特殊なパターンです。公式②の中でも、例外的にはやく計算できるのが、公式③~⑤のパターンなので、そちらを先に検討した方が効率的であるというわけです。

この公式選択の考え方は、「特殊なパターンの検討⇒一般的なパターンの検討」という思考の流れになっています。こういう考え方は、限られた選択肢から、適切なものを効率よく選び出すときによく使うので、頭の隅にでも置いておいてください。

例題

例題1:\(-4x-12\)

  1. \(-4x\)と\(-12\)の共通因数は-4

  \(-4x-12=-4(x+3)\)


例題2:\(x^2-5x-24\)

  • \(x^2\)と\(-5x\)と\(-24\)に共通因数なし
  • 式に項が3つ
    →(2 乗-2 乗)の形ではない
  • 定数項-24:24は整数の 2 乗ではない
  • かけて-24になる組み合わせは
    ( 1,-24),( 2,-12),( 3,-8),( 4,-6)
    このうちたして\(x\)の係数-5になる組み合わせは
    (3 ,-8)

  \(x^2-5x-24=(x+3)(x-8)\)


例題3:\(x^2+6x+9\)

  • \(x^2\)と\(6x\)と\(9\)に共通因数なし
  • 式に項が3つ
    →(2 乗-2 乗)の形ではない
  • 定数項 9:3 の 2 乗
    →\(x\)の係数 6 : 2 × 3 = 6
    →公式③が使える

  \(x^2+6x+9=(x+3)^2\)


例題4:\(x^2-81\)

  • \(x^2\)と\(-81\)に共通因数なし
  • 定数項-81:81は 9 の2 乗
    →(2 乗-2 乗)の形

  \(x^2-81=(x+9)(x-9)\)


例題5:\(x^2-4x+4\)

  • \(x^2\)と\(-4x\)と\(4\)に共通因数なし
  • 式に項が3つ
    →(2 乗-2乗)の形ではない
  • 定数項 4:4 は 2 の 2 乗
    →\(x\)の係数 -4 : 2 × 2 =4
    →公式④が使える

  \(x^2-4x+4=(x-2)^2\)


例題6:\(x^2+10x+9\)

  • \(x^2\)と\(10x\)と\(9\)に共通因数なし
  • 式に項が3つ
    →(2 乗-2乗)の形ではない
  • 定数項 9:9 は 3 の 2 乗
    →\(x\)の係数 10 : 2 × 3 =6
    →\(x\)の係数と一致しない
    →公式③、④は使えない
  • かけて 9 になる組み合わせは
    ( 1, 9)、( 3, 3)
    このうちたして 10 になる組み合わせは
    (1 , 9)

  \(x^2+10x+9=(x+1)(x+9)\)

おすすめ勉強方法

因数分解は「考え方の練習」がカギ

因数分解は、中学1年生・2年生で習う「数と式」「式の計算」と同じく、計算が中心の分野です。しかし、決定的な違いがあります。

「数と式」は、ルールを理解すれば、繰り返し解いていく中で自然と身につくことが多い分野です。一方、因数分解は「どの公式を使うか」を自分で判断する必要があります。何も考えずに問題を反復しても上達しにくいです。

出題パターンがそれほど多くないので(公式②~⑤に限れば約200パターン程度)、時間をかければできるようになります。でも、それは効率が悪く、途中でつまずくリスクもあります。また、受験で幅広い範囲から出題されるときに中々知識が出てこないなんてことも起こりえます。

だからこそ、因数分解の勉強では「考え方の練習」がとても重要なのです。

一応、参考までに、公式②~⑤の約200パターンの根拠を述べておきます。興味がなければスルーしてください。

公式②:
\(x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\)

このとき、\(a\)や\(b\)に使われる数字は、ほとんどの場合「一桁の正負の整数(±1〜±9)」です。つまり、それぞれ 18通りの中から選ばれるので、18 × 18 = 324通り の組み合わせが考えられます。

でも、\(a = 3, b = 2\)のときと、\(a = 2, b = 3\)のときは、どちらも
\(x^2+5x+6\) になりますよね?

だから、324通りのうち、半分は同じ式だとわかります。そのため、\(a\),\(b\)を一桁の数とすると、324÷2=162通りの式しか存在しないというわけです。これに2桁の数が混ざったものも考えても(2桁なら何でも出るわけでもない)、200パターン程度というわけです。

前項でも述べた通り、公式③~⑤は公式②の特別な形なので、もちろんこの162通りの中に含まれています。

具体的には

同じ問題を、考え方を確認しながら何度も解くのが効果的です。

問題を変えて、数字が変わってしまうと数字の計算に頭を使ってしまいます。すると、考え方の確認をするための余力が減ってしまいます。

公式が全部出てくる、計5~6問の問題でいいので、毎日、考え方を確認しながら解いてください。A4の紙に、黒字で問題を、シートで消えるペンで考え方を書いて、シートで隠しながら確認するとかもいいと思います。10分もあれば十分終わります。それを1週間も続ければ、考え方は身につきますよ。

例題に挙げた問題でも全然大丈夫だと思いますので、よかったらやってみてください。

ちなみに、実際、私が塾講師として指導していたときには、「式はそのままにして、計算せずに“なぜこの解き方になるのか”を確認する練習」を繰り返すよう言っていました。苦手だった生徒たちも着実に力をつけていきました。

おわりに

この記事では、

  • 因数分解、公式選択の方法
  • おすすめの勉強法

ていねいに、考え方を何度も反復するのが、習得への一番の近道なので焦らず取り組んでみてください。

コメント