数学の一次関数で登場する「変化の割合」。
定期テストなどでは「変化の割合=\(a\)」と暗記して乗り切ってしまうことも多いかもしれません。
しかし、「公式の意味がよくわからない」「マイナスの数が出ると増加量の計算でミスをしてしまう」と悩む方も少ないと思います。
この記事では、変化の割合を「公式の暗記」ではなく「倍率」という本来の意味から考え、計算ミスを防ぐための具体的な手順まで丁寧に解説します。
表を使った情報の整理方法や、ゴールから逆算する考え方を順を追って確認していけば、どんな問題でも基本通りに解ける力が必ず身につきます。
変化の割合って何?
変化の割合とは「\(x\)が\(1\)増えたときに\(y\)がどれだけ増えるか」を表す数値
変化の割合は「\(x\)の増加量に対する\(y\)の増加量の割合」のことです。
「割合」と聞くと少し身構える人もいるかもしれませんが、要は「\(y\)の増えた量は\(x\)の増えた量の何倍か」を表しています。
もう少しかみ砕くと、「\(x\)が\(1\)増えたときの\(y\)がどれだけ増えたか」を調べるための数値なのです。
一次関数\(y=ax+b\)における変化の割合
一次関数\(y=ax+b\)の\(a\)は変化の割合と一致する
一次関数の\(y=\color{red}{ax}\color{blue}{+b}\)という式を考えてみます。
\(\color{blue}{+b}\)の部分に\(x\)は入っていません。
そのため、\(x\)が変わっても(y\)の変化には関係しません。
\(y\)の変化に関係があるのは、\(\color{red}{ax}\)の部分のみです。
実際、\(x\)の値をいろいろ変えてみると
- \(x=0.5\)のとき
\(y=0.5a+b \text{(aが0.5個分とb)}\) - \(x=1\)のとき
\(y=a+b \text{(aが1個分とb)}\) - \(x=2\)のとき
\(y=2a+b \text{(aが2個分とb)}\) - \(x=4\)のとき
\(y=4a+b \text{(aが4個分とb)}\)
となり、やはり\(b\)はそのままで、
- \(x\)が\(0.5 \rightarrow 1\)のとき
\(a\)が\(0.5\)個分増加 - \(x\)が\(1 \rightarrow 2\)のとき
\(a\)が\(1\)個分増加 - \(x\)が\(2 \rightarrow 4\)のとき
\(a\)が\(2\)個分増加
と、「\(x\)が増えた分の\(a\)倍だけ\(y\)が増えている」ということがわかります。
変化の割合とは「\(x\)の増加量に対する\(y\)の増加量の割合」、つまり「\(y\)の増えた量は\(x\)の増えた量の何倍か」を表す数値のことでした。
だからこそ、一次関数の場合は変化の割合がそのまま「 \(a\) 」になるのです。
ここで一つだけ注意してほしいことがあります。
それは、「変化の割合」の「\(a\)という文字」も一次関数専用ではないということです。
どちらも、他の関数でも使いますし、一次関数(比例含む)以外では、基本的には\(a\)と変化の割合は一致しません
あくまで、「一次関数\(y=ax+b\)の\(a\)は変化の割合である」というだけです。
「\(a\)は変化の割合」と単純化し過ぎると、一次関数の定期テストぐらいでは問題ないのですが、後々の学習の誤解のもとになりやすいので、気を付けてください。
変化の割合はどうやって計算したらいいの?
【変化の割合の公式と計算のポイント】
\(\displaystyle \text{変化の割合}= \frac {\text{yの増加量}}{\text{xの増加量}} \)
\(\text{増加量}=\text{増加} \color{red}{\text{後}} \text{の値}-\text{増加} \color{red}{\text{前}} \text{の値}\)
⇒増加量の計算は「後-前」を徹底
変化の割合の計算では、「公式通りに計算できるか」と、「増加量の計算が正しくできるか」という2つが大事なポイントです。
ここからは、変化の割合の公式の意味と、増加量の計算方法と注意点について詳しく説明していきます。
変化の割合の公式の意味
変化の割合の計算は、結局は倍率計算
この公式を説明すると、「公式を暗記しなきゃ」となりがちです。
でも、意味から考えられるようになれば、暗記する必要はありません。
たとえば、「\( \color{red}{6}\)は\( \color{blue}{2}\)の何倍か?」を考えたければ、
\[ \color{red}{6} \div \color{blue}{2} = 3\]
と計算して、\(3\)倍と答えると思います。
前の章で、変化の割合とは、「\(y\)の増えた量は\(x\)の増えた量の何倍か」を表す量であるとお伝えしました。
\( \text{「} \color{red}{\text{“} y \text{の増加量”}} \text{は} \color{blue}{\text{“} x \text{の増加量”}} \text{の何倍か?」}\)を考えたければ、先ほどと同じように考えて、
\[\color{red}{y \text{の増加量}} \div \color{blue}{ x \text{の増加量}}\]
と計算すればよいです。
このわり算を、分数のかたちに直すと、変化の割合の公式である
\[\text{変化の割合} = \frac {\color{red}{\text{yの増加量}}}{\color{blue}{\text{xの増加量}}}\]
が得られます。

変化の割合の公式だけを覚えるより、「○の何倍か?」と考えるのに「÷○」という計算が出てくるようにしておく方が、圧倒的に応用範囲は広いです。
増加量の計算方法と注意点
増加量の計算は「後-前」を徹底
「増加量」は、言葉の通り「増加の前後で増えた量」を表します。
たとえば、\(x\)が\(\color{red}{2}\)から\(\color{blue}{4}\)に増えた場合、増加前が\(2\)、増加後が\(4\)なので、
\[\color{blue}{4}-\color{red}{2}=2\]
と計算できます。
ここまでだと難しくはないのですが、間違えやすくなるのが次の3つの場合です。
- 数字が減るとき
- 負の数が混じるとき
- 文字が混じるとき
増加量の計算で数字が減るとき
「\(x\)が\(\color{red}{4}\)から\(\color{blue}{2}\)になった」のようなときです。
これを「増加量」という言葉に引っ張られて「増加量は\(2\)」と考えてしまう人が結構いますが、これは誤りです。
気持ちはわかるのですが、数字が減ったときは、増加量はマイナスと考えます。
正しくは、
\[\color{blue}{2}-\color{red}{4}=-2\]
と計算して、「増加量は\(-2\)」とするのが正しいです。
増加量の計算で負の数が混じるとき
「\(x\)が\(\color{red}{-2}\)から\(\color{blue}{3}\)になった」のようなときです。
こういう計算だと、どちらからどう引けばよいのかわからなくなって手が止まったり、符号ミスをする答案が増えます。
これも、変化後の値\(\color{blue}{3}\)から変化前の値\(\color{red}{-2}\)を引けばよいので、
\[\color{blue}{3}-\color{red}{(-2)}=5\]
と計算して、「増加量は\(5\)」とするのが正しいです。
負の数を引くときは、\((-2)\)のように、カッコをつけてひとかたまりとして扱うと、計算ミスを減らすことができます。
増加量の計算で文字が混じるとき
「\(x\)が\(\color{red}{-1}\)から\(\color{blue}{a}\)になった」のようなときです。
これは、本当に手が止まってしまう人が多いです。
これもやはり「後-前」のルール通り引けばよく、
\[\color{blue}{a}-\color{red}{(-1)}=a+1\]
と計算して、「増加量は\((a+1)\)」とするのが正しいです。
ここまで、増加量の計算で注意したいパターンについて述べましたが、ミスしないための対策は、「後-前」を徹底することに尽きます。



「計算ミスの対策」と聞くと、多くの人は、何か特別なことがあると考えがちです。
でも、実は、ミスの大半は「人が自分のさじ加減で基本から外れたとき」に起こるものです。
だから、ミスをなくす一番の対策は、「どんなシチュエーションでも基本通り実行できるように訓練する」になることが多いです。
変化の割合の頻出例題を見てみよう
例題
一次関数\(y=2x-3\)において、\(x\)が\(-1\)から\(4\)まで増加するときの変化の割合は?
方針
解答を書きだす前に、次の流れを確認する。
- 変化の割合の計算には\(x,y\)の増加量が必要
- 増加量計算には\(x,y\)の値が必要
- \(y\)の値がわからないので、関数の式と\(x\)の値から計算する
解答
\(x=-1\)のとき
\(y=2 \times (-1) -3 =-5\)
\(x=4\)のとき
\(y=2 \times 4 -3 = 5\)
よって、\(x\)の増加量は\(5\)、\(y\)の増加量は\(10\)と計算できるため
\( \text{変化の割合} = \frac{10}{5} = 2\)
| 文字 | 変化前 | 変化後 | 増加量 |
|---|---|---|---|
| \(x\) | \(-1\) | \(4\) | \(5\) \(=4-(-1)\) |
| \(y\) | \(-5\) | \(5\) | \(10\) \(=5-(-5)\) |



表はメモ書きなので、解答には入れなくて大丈夫ですよ。
解説のために丁寧に書いていますが、実際は「前」「後」「増」ぐらいで、自分が間違えなければどう書いても大丈夫です。
解説
中学校2年生で変化の割合を習ったときに出てくる、定期テストでもよく見かける定番の問題です。
この問題で押さえておくとよいポイントは次の3つです。
- \(x,y\)の変化前後の値・増加量をうまく整理できる
- 変化の割合の計算を考える順番がわかる
- 何のために変化の割合の計算をしているかがわかる
この3つが見えてくると、問題がぐっと見通しやすくなります。
では、次の章から、それぞれのポイントについて解説していきます。
変化の割合を求める問題は、考える順番を意識
変化の割合を求める問題では、まず最初に次の順序で思考を組み立てる
- 変化の割合の計算には\(x,y\)の増加量が必要
- 増加量計算には\(x,y\)の値が必要
- \(y\)の値がわからないので、関数の式と\(x\)の値から計算する
例題では、
- \(y\)の値
- \(x,y\)の増加量
- 変化の割合
の順に計算しています。
「解き方はわかるけど、自分では解けない」という人は、この手順を丸暗記しようとしていることが少なくありません。
でも、この順番を機械的に覚えるのはあまり効果的ではないです。
なぜかというと、「\(y\)の値」の計算と「変化の割合」の計算が直接つながっていないからです。
- ゴール:変化の割合を出すこと
- 必要なもの:\(x\),\(y\)の「増加量」
- \(y\)の値を求める理由:「増加量」を計算するための準備
じゃあどうやって考えればいいかというと、思考の順番としては「ゴールから逆算する」とうまくいくことが多いです。
具体的には、まず問題を解く前に次の順番で考えを組み立ててみてください。
- 変化の割合の計算には\(x,y\)の増加量が必要
- 増加量計算には\(x,y\)の値が必要
- \(y\)の値がわからないので、関数の式と\(x\)の値から計算する
ゴールから逆算すると、目的が見えるので、何をすべきかがクリアになります。
「手順を1から順に覚える」のではなく、「なぜ今この計算をしているのか」という目的意識を持つことが、自力で解ける第一歩になります。



「逆算の考え方って何?」と思った方はこちらの記事をお読みください。
数学で必須の考え方なので、使えるようになると解法の見え方が変わってきますよ。
👉数学が『わかるのに解けない』人へ|逆算思考で変わる考え方【数学のコツ】
表をつかった変化の割合の問題の整理方法
変化の割合を求めるときは、\(x\)、\(y\)の、変化前・後の値、増加量を、次のように表にまとめると考えやすい
- たて列:\(x\)、\(y\)
- 横行:変化前の値、変化後の値、増加量
| 文字 | 変化前 | 変化後 | 増加量 |
|---|---|---|---|
| \(x\) | |||
| \(y\) |
変化の割合に限らずですが、「何かが変化する様子」を整理したいときは、表はとても有効なツールです。
変わっていくものを縦列に、変わっていく状態を横行にとるのが基本です。
人の目は横にスライドしやすいので、こう書くと、1つのものがどう変わっていったかをストレスなく追うことができるのです。
変化の割合では、\(x,y\)が変化していくので、\(x,y\)を縦列に、「変化前」「変化後」「増加量」という、状態や知りたい値を横行します。
\(x,y\)がどう変わったかがぐっと整理しやすくなるので、ぜひ試してみてください。



科目は違いますが、理科(高校だと化学分野)の化学反応なんかは、変化の前後でどうなっているのかを考える単元なので、まさにこういう表の考え方がものすごく効きます。
なぜ傾き\(a\)が変化の割合とわかっているのにこんな計算をするの?
変化の割合は、どの関数でも使う考え方で、傾き\(a\)と一致するのは一次関数だけ
一次関数では\(y=ax+b\)の\(a\)が変化の割合になっています。
そのため、「なぜこんな計算をするのかわからない」という声をよく聞きます。
「変化の割合」は一次関数のみでなく、すべての「関数」で使う考え方で、どのように\(y\)の値が変化しているのかをとらえるための道具です。
それが一次関数のときは\(a\)と同じになっているのです。
そのため、「変化の割合の求め方」は、「一次関数の変化の割合は傾きと同じ」とは別に習得しておく必要があるのです。
一次関数|変化の割合の演習
演習1
点(1, 5)から点(4, 7)に変化したときの変化の割合を求めなさい。
解説
- 【方針】
-
- 変化の割合の計算には\(x,y\)の増加量が必要
- 増加量計算には\(x,y\)の値が必要
- 問題文で\(x,y\)の値が与えられているので増加量計算から始める
- 【解答】
-
変化前後の\(x\)、\(y\)の表を書いて考える。
変化前 変化後 増加量 \(x\) 1 4 3
(=4-1)\(y\) 5 7 2
(=7-5)\( \displaystyle \text{変化の割合}=2 \div 3 =\frac{2}{3} \)
演習2
点(-2, -1)から点(1, -10)に変化したときの変化の割合を求めなさい。
解説
- 【方針】
-
- 変化の割合の計算には\(x,y\)の増加量が必要
- 増加量計算には\(x,y\)の値が必要
- 問題文で\(x,y\)の値が与えられているので増加量計算から始める
- 【解答】
-
変化前後の\(x\)、\(y\)の表を書いて考える。
変化前 変化後 増加量 \(x\) -2 1 3
(=1-(-2))\(y\) -1 -10 -9
(=(-10)-(-1))\( \displaystyle \text{変化の割合}=-9 \div 3 = -3 \)
- 【注意点】
-
増加量計算に「-(負の数)」の計算が出てくるので、「後-前」、「カッコをつける」を意識する
演習3
一次関数\(y=4x-1\)について、\(x\)の値が2から5に変化するとき、それぞれ次の値を求めなさい。
1)\(x\)の増加量
2)\(y\)の増加量
3)変化の割合
解説
- 【方針】
-
誘導も小問がついていても、全体の方針確認からはじめる
基本的にこの流れに小問があるので全体の見通しがよくなる- 変化の割合の計算には\(x,y\)の増加量が必要
- 増加量計算には\(x,y\)の値が必要
- \(y\)の値がわからないので、関数の式と\(x\)の値から計算する
- 【解説】
-
1)
「後-前」で考える。
5-2 = 32)
\(y\)の増加量を計算するためには、\(x\)の値に対応する\(y\)の値が必要\(x\)=2のとき\(y\)=7
\(x\)=5のとき\(y\)=19よって\(y\)の増加量は
19-7=123)
変化前後の\(x\)、\(y\)の表を書いて考える。変化前 変化後 増加量 \(x\) 2 5 3
(=5-2))\(y\) 7 19 12
(=19-7)\( \displaystyle \text{変化の割合}=12 \div 3 = 4 \)
一次関数の変化の割合の求め方のまとめ
変化の割合は、単なる暗記用の公式ではなく、「\(x\)が\(1\)増えたときに\(y\)がどれだけ増えるか」を捉えるための大切な考え方です。
計算の手順が少し多く感じるかもしれませんが、「ゴールから逆算して必要なものを整理する」というアプローチと、表を使った「後-前」の計算ルールを守れば、どんな問題でも迷わずに答えにたどり着けます。
この考え方は一次関数だけでなく、今後の数学の学びでもずっと役立つ土台となります。焦らず、基本の考え方を確認しながら一つずつ進めていきましょう。
【今回の重要ポイント】
- 変化の割合は「\(x\)が\(1\)増えたときのyの増加量(\(y\)の増加量は\(x\)の増加量の何倍か)」を表す。
- 増加量の計算は、数字が減るときや負の数・文字が混じるときでも「後の値-前の値」を徹底する。
- 計算の方針は目的から逆算して立て、表を活用して\(x\)と\(y\)の変化を整理する。
【次にやってみよう】
- まずは記事内の演習問題に挑戦し、実際に表を書いて手を動かしてみましょう。
- お持ちの問題集を開き、増加量の計算で「後-前」のルールが徹底できるか確認してみましょう。
- 今後学ぶ他の関数(二次関数など)でもこの概念を使うことを、心の片隅に留めておきましょう。


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